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大阪地方裁判所 平成元年(わ)1326号 判決

本店所在地

大阪市旭区生江一丁目二番二〇号

南都実業株式会社

(右代表者代表取締役 田村吾郎)

本籍

奈良市北市町二四番地

住居

大阪府豊中市長興寺三丁目一六番二〇号

会社役員

田村吾郎

昭和一九年三月一五日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官藤村輝子、同山田廸弘各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人南都実業株式会社を罰金二二〇〇万円に、被告人田村吾郎を懲役一年にそれぞれ処する。

被告人田村吾郎に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人南都実業株式会社(以下、被告会社という。)は、大阪市旭区生江一丁目二番二〇号に本店を置き、建築工事の設計、施工、並びに管理等を目的とする資本金二〇〇〇万円の法人であり、被告人田村吾郎(以下、被告人という。)は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、

第一  被告会社の昭和六一年四月一日から同六二年三月三一日までの事業年度における実際所得額が八九九八万四三五〇円(別紙(一)修正損益計算書参照)あつたにもかかわらず、売上の一部を除外するほか、架空の材料仕入れを計上するなどの行為により、その所得の一部を秘匿した上、同六二年六月一日、大阪市旭区大宮一丁目一番二五号所在の所轄旭税務署において、同税務署長に対し、その所得額が、一八五九万五六一六円でこれに対する法人税額が五〇六万一〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もつて不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額三五九八万五二〇〇円と右申告税額との差額三〇九二万五一〇〇円(別紙(三)税額計算書参照)を免れ

第二  被告会社の昭和六二年四月一日から同六三年三月三一日までの事業年度における実際所得額が一億六七四五万九八八一円(別紙(二)修正損益計算書参照)あつたにもかかわらず、前同様の行為により、その所得の一部を秘匿した上、同六三年五月三一日、前記旭税務署において、同税務署長に対し、その所得額が二八九四万三四一三円でこれに対する法人税額が九〇六万一七〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もつて不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額六七二三万一一〇〇円と右申告税額との差額五八一六万九四〇〇円(別紙(三)税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告会社代表者兼被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書

一  収税官吏の被告人に対する質問てん末書三〇通

一  浅草みち子の検察官に対する供述調書二通

一  収税官吏の浅草みち子に対する質問てん末書一八通

一  収税官吏の三木博、木村泰子(二通)、宮川修(二通)、橋本章作、笹谷則男、小久保輝子、田村司郎、中村孝子、田端雅夫、樋口葉子、山田雅樹、坂上坦、田村美智子に対する各質問てん末書

一  被告会社作成の証明書

一  収税官吏作成の査察官調査書一六通(証拠番号7、10、14、20ないし22、31、32、36、39ないし41、44、50、51、55)

一  被告会社に関する商業登記簿謄本及び閉鎖商業登記簿謄本

判示第一の事実につき

一  収税官吏作成の脱税額計算書(証拠番号1)

一  旭税務署長作成の証明書(証拠番号3)

一  収税官吏作成の査察官調査書一四通(証拠番号8、9、11、12、23、24、27、28、30、34、35、46ないし48)

一  収税官吏作成の査察官報告書(証拠番号49)

判示第二の事実につき

一  収税官吏作成の脱税額証明書(証拠番号2)

一  旭税務署長作成の証明書(証拠番号4)

一  収税官吏作成の査察官調査書一五通(証拠番号13、15ないし19、25、26、29、33、37、38、42、43、45)

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも法人税法一五九条一項に該当するところ、所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一年に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

さらに、被告人の判示各所為は被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については、いずれも法人税法一六四条一項により判示各罪につき同法一五九条一項の罰金刑に処せられるべきところ、情状により同条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により合算した金額の範囲内で被告会社を罰金二二〇〇万円に処することとする。

(量刑の理由)

本件犯行は、動機に格別酌むべきものがなく、平均ほ脱率も八六・三パーセントと高率で、その方法においても売上繰延べ、除外、水増し計上のほか、他法人の代表者印、領収書を偽造して架空計上するなど悪質であることに鑑みると、被告人らの刑事責任は軽視できないが、他方、被告会社においては、本税については既に全額納付済であり、附帯税についても逐次納付の予定であること、現在被告人は罪を反省し、今後再犯を繰り返さない旨誓つていることなど被告人らに有利な事情も存するので、これらを総合考慮した上、主文の刑を量定した。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 白井万久)

別紙(一)

修正損益計算書

自 昭和61年4月1日

至 昭和62年3月31日

(南都実業株式会社)

〈省略〉

〈省略〉

別紙(二)

修正損益計算書

自 昭和62年4月1日

至 昭和63年3月31日

(南都実業株式会社)

〈省略〉

〈省略〉

別紙(三)

税額計算書

南都実業株式会社

〈省略〉

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